「花音……」


泣いている私を見て、戸惑っている海司。


泣くつもりなんかないのに。


あまりにビックリして。


どうしてこんなことになったのかわからなくて。


溢れる涙が止まらない。


「ご、ごめん…」


そう言って、壁に着いた手の上に自分の額を乗せる海司。


「本当に…。悪かった……」


顔にサイドの髪がかかって、海司の顔がよく見えない。


ごめんって言われたって。


何をどう受け止めたらいいの?


海司の考えていることが、全然わからない。


私の手首を掴んでいた海司の手の力が緩んだところで。


私は海司の身体をスルリと抜けて、玄関のドアを開けた。


急いで走って自分の部屋に入ると。


ベッドの上にそのまま倒れ込んだ。


海司……。


なんでキスなんかしたの?


やっと身体が元通りになって、これほど嬉しいことはないのに。


私達の関係、一体どうなってしまったの?


なんかすごく変だよ。


私はただ以前のように、


海司と家族みたいに楽しく笑っていたいだけなのに。


海司は、もう二度とそうしてくれないの?


私達これから、


どうなってしまうの……?