「…レだって…」


「え…?」


なんて言ったの?


よく聞こえなかった。


私の目の前は、海司の頭頂部しか見えなくて。


海司の表情が全くわからない。


「俺だって、いやだったんだ……っ」


そう言って、海司がゆっくりと顔を上げる。


すると私の顔の僅か10cm前に、海司の綺麗な顔が現れて。


私は身動きも取れずに、ゴクンと喉を鳴らした。


「すげーいやだった。

スワンボートの中で、お前と恵介がしていたこと」


それって…。


未遂だったキスのこと?


「あれ見て…、心臓がバクバクして…」


うそ…。


だって海司。


全然平気な顔をして。


続きやれって言って、立ち去って行ったじゃない。


「したのか?」


「え……?」


「したのかって聞いてるんだ!」


「だから、何を?」


「あーーーもう!なんで俺の口から言わせるんだよ!

こういうことだよ!」


そう言うと海司は、急に私との距離を縮めて。


自分の唇を私の唇に強く押し当てた。