バスがバス停に停まると、後ろのドアから足早にバスを降りる海司。


私も慌てて、海司に続いた。


バス停からマンションまでは、5分もかからない。


その道中、海司は私を振り返ることなく早足で歩いて行く。


もう!


このままずっと振り返らないつもり?


外はもう真っ暗で、次第に海司の姿も見えなくなっていった。


私がマンションのロビーにやっと到着すると。


海司は一台しかないエレベーターを待っているところだった。


エレベーターが1階に到着して、海司の後に私も乗り込む。


ドアが閉まった途端、シンとするエレベーター内。


私はこの沈黙に耐えられなくなっていた。


「ねぇ、海司!いい加減にして!」


思わず声を出したその時。


入口付近に立っていた海司が突然振り返って。


ガシッと私の右手首を掴んだ。


その力はものすごく強くて。


そして、海司の顔もひどく怖くて。


私は心臓がハンパなくドクドクと音を立てていた。


「来い!」


エレベーターが開いた途端、私の手を引いて早足で歩く海司。


連れて行かれたのは海司の家の前だ。


ピッとドアの施錠を外したかと思ったら。


海司はドアを乱暴に開けて。


私を自分の家の玄関へと押し込んだ。