「なあ…」


突然、海司が低い声を出した。


「俺にどうしろっての?」


「え……?」


どういう…意味?


「俺はお前に言われた通り、ちゃんと4人で遊びに行っただろう?

行ったのに、なんで文句を言われないといけないんだよ」


「海司…」


「お前は恵介と仲良くやってりゃいいだろう?

これ以上、俺に何か要求するな」


「別に要求なんか。私はただ……」


海司のそういう態度が、なんか嫌なだけ。


「あれ?海司、あのスヌードは?唯に返してもらってないの?」


「は?

あぁ…。寒そうだったから、着て帰れって言ったんだ。

別にいいよ。俺は寒くないし。

明日、学校で返してもらえれば」


ふぅん…。


そうなんだ…。


「海司、唯のこと気に入ってんだね」


「はぁ~?」


「だって、普段は女子に冷たい海司がそんなことするなんてさ。

好きなんじゃない?」


「お前…、何言ってんだよ」


「何よっ。唯にばっかり優しくしてさ。私にはひどい態度だよね!」


そう言った直後、私達が降りるバス停の到着を知らせるアナウンスが車内に流れた。


ピンポンとボタンを押す海司。


私はそんな海司の後ろ姿をじっと見ていた。