「美倉さん、教室まで一緒に行こう」


「うん」


ただ今、サッカー部の朝練が終わったところ。


来週の練習試合まで、しばらく朝練が続きそうだ。


私はと言えば、相変わらずドジを踏みまくっているけれど。


みんなに助けられつつ、なんとかマネージャーの仕事をこなしていた。


「ねぇ、美倉さん」


「なに?佐野君」


「いや、あのね。俺達、付き合うことになったのに、いまだに名字で呼んでるなあって思って」


そう言って、佐野君がクスクスと笑った。




3学期が始まってすぐのことだった。


部活が終わった後、佐野君に部室の裏に呼ばれて。


どうしたんだろうと思っていたら、『付き合って欲しい』って言われた。


一瞬、戸惑った。


佐野君は、以前私の姿になっていた海司とよく接している。


もともと仲良しの二人だから、それで私に親しみを感じているだけかもしれないって。


でも、佐野君はこう言った。


12月の終わりくらいから、特に気になり始めたと。


カラオケに一緒に行った時、好きだなって思ったって…。


それは、私自身のことだから。


それがすごく嬉しくて。


私は『はい』と返事をした。