恵介の言葉に、机にかけていた肘がズルリと落ちた。


恵介って案外鈍いのな。


花音は、お前のことがずっと好きだったっていうのに。


「大丈夫だって。学年でトップ3に入るほどモテるお前が告白して、落ちない女なんかいないって」


「そ、そうかなあ……」


「そうだよー」


恵介は普段からものすごくモテているのに、自分の恋愛となると臆病になるんだな。


「そういう海司だって、実は自分がモテてるって知ってた?」


「は?」


俺がモテる?


あぁ…、それは中身が花音だった頃の俺のことだろう?


「海司がマネージャーの補佐で部活に出てた時さ、陸上部の女の子達が騒いでた。

すっごいカッコイイって。

なんか、オーラがすごいんだってさ」


「オーラ?」


オーラって何?


「多分だけど、芸能人みたいな感じなんじゃない?」


「なんだ?それ」


「クラスの女子だって、海司のことチラチラ見てるよ」


「それは、俺の隣にいる恵介を見てるんじゃないのか?」


「違うよ。海司だよ!」


まじで?


俺、もう中身が花音じゃないのに?


「じゃあ俺も本気になったら、彼女が作れるのかな?」


17年間、彼女なしだけど。


「海司が本気になれば、速攻で作れるよ」


恵介はにんまりと笑った。