急に危ないって言われても、何が危ないのかわからない。


やだ、どうしよう!


身動きが取れずに、固まっていたその時。


急に視界が真っ暗になって、身体がガクッと揺れた。


その直後、ザッザッザッザという大きな音が、私の耳を強く叩きつけていった。


な、なに?


怖い。


一体、何が起こったの?


閉じていた目を恐る恐る開けると。


「え……?」


私は、海司に抱きかかえられていた。


うそ。


今海司の胸に、私の顔がピッタリ触れている。


「大丈夫か!花音」


私の両肩を持って、海司は真剣な瞳で私を覗き込んだ。


「だ、大丈夫……」


「そうか、良かった」


ホッと安堵のため息をつく海司。


「陸上部の連中が、かなりのスピードでトラックを走ってたんだ。

お前、これからもライン引きをする時は、周りに気をつけろ。

他の部活の連中も大勢いるし、ボールも容赦なく飛んで来るから」


「う、うん……」


ついこの前も似たようなことがあった。


サッカー部員の蹴ったボールが私に飛んできて、海司は咄嗟に私の前に出て、ボールを蹴り返してくれたんだよね。


ん?


待って。


違う……。


その時だけじゃない。


6月に、バイクで事故に遭った時。


あの時、海司は咄嗟に私をかばって。


私の盾になったせいで、それで大怪我を負ったのよ。


私の身体が軽傷ですんだのは。


海司が私を守ってくれたからなんだ……。