「立花さん。海司君の様子は?」


おじさんが、親父に尋ねた。


「意識が戻らない事には何とも…」


親父の表情は暗い。


「花音ちゃん、目が覚めたのね。無事で本当に良かったわ」


そう言って涙ぐむ母さん。


母さん、俺はここにいるよ。


どうして気づかない?


「海司の意識が戻らなかったら、どうしよう…っ」


姉貴までもが泣いている。


だから、俺はここにいるって!


「入院の準備があるので、私達は一旦自宅に戻りますね」


「……はい。気をつけて」


母さん達、帰るのか?


俺は?


俺は一体どうしたら……?


「花音、私達も家に帰りましょう。

あ、先生。すみません。

もう帰っても大丈夫なんでしょうか?」


おばさんが通りかかった医者を呼び止めて言った。


「はい、もう大丈夫ですよ。

CTもMRIも異常はなかったですし、脳波も正常でした。

ただ2、3日は家でちょっと様子を見てあげてくださいね。

ケガもしておられますしね」


「はい。本当にありがとうございました」


おばさんは深く頭を下げた。