「この前はありがとう。楽しかったね」


にっこり笑う佐野君。


「こちらこそ、誘ってくれてありがとう」


なんか、ちょっと照れ臭いな。


なんだか落ち着かなくて、下を向いていたその時。


「おーい、海司」


突然大きな声を出す佐野君に、ドキッと心臓が跳ねた。


「おう、恵介」


佐野君に返事をしながら歩いて来る海司のことを、私はチラリと見上げた。


「初詣で会った時、ビックリしたよ。

海司が美倉さん以外の女の子とふたりでいるところなんて、初めて見たから」


「別に…。同じクラスだし、会えば話くらいするだろう?」


海司は淡々と言った。


「まぁ、それもそうだね。海司退院してから、女子と話すようになったもんね」


「そんな話はいいから、早く練習に行けよ」


「ん、そうする。じゃあまた後で」


爽やかに言うと、佐野君は部員の待つグランドへと走って行ってしまった。


海司と急にふたりきりになって、私はちょっとドキドキしていた。


「ねぇ、海司。今朝何時に家を出たの?」


いつもは一緒に学校に行くのに、会えなかった。


「あぁ。俺、ばあちゃん家から直接来たんだ。始発に乗ったから、今朝はむっちゃ早起きした」


「そうなんだ」


だから、会えなかったんだ。


まぁ、別にいいんだけど。