「窮屈ってどういうこと?

父さんのこと、好きじゃないの?」


美空さんが顔を真っ赤にして言った。


「私達、良い家族だったじゃない。

私、いつも友達にうらやましがられたわ。

家事が得意で料理上手で美人なお母さんのこと。

すごく、自慢だったのよ……」


ホント、そうだよね。


海司のお母さんはとても上品で、まるでどこかの国の王女様みたいな人だもの。


「美空…。

母さんね。

無理していただけなの。

本当はそんなんじゃないのに……」


「え……?」


美空さんが目を大きく見開いた。


「本当は掃除なんて好きじゃないし、料理も好きじゃないの。

洗濯も苦痛だったのよ」


「え…?お母さん、好きでやってたんじゃないの?」


おばさんは首を横に振って、ため息をついた。


「好きじゃないわ。

主婦としての当然の義務だと思って、仕方なくやっていたの」


「そ…うだったんだ…。

私てっきり料理とか掃除が大好きなのかと思ってた。

だってお母さん、本当に完璧だったから……」


美空さんが、ガクッと肩を落とした。


「なぁ、母さん。

家事なんて頑張らなくていいから。

出来なくても、みんなで協力すればいいから。

だから戻って来てくれないかな?」


おじさんの言葉に、一瞬表情を変えるおばさん。


でも、すぐにうつむいてしまった。


「もう、無理です……」


おばさん……。


そんなの、そんなのイヤだよ。


海司が…。


海司がかわいそう。


おばさんのことが大好きなのに……。