「花音。

どうしたらいい?

俺、どうしたらいいんだよ」


俺の中の、理想の家庭像がガラガラと音を立てて崩れていく。


俺は子供のように、花音に抱きついて泣きじゃくった。


そんな俺を、花音がぎゅっと抱きしめる。


俺も腕に力を込めた。


花音が俺の頭を優しく撫でてくれる。


女って多分、男にこうされるとホッとするんだろうなって。


こんな状況なのに、ちょっとだけ頭の片隅で思った。


自分の身体がこんなに大きいとは知らなかった。


そして、自分の身体にすっぽり入ってしまう花音の身体が、こんなに小さいなんて思わなかった。


「海司…。

今週末、おじさんと一緒におばあちゃんの家に行くみたいだから。

私、頑張って阻止するから…。

絶対。

絶対離婚なんてさせやしないわ」


「花音……」


「信じて。

私を信じて……」


俺はもう一度、腕に力を込めた。


花音も俺を抱きしめてくれる。


花音を信じよう。


コイツなら、なんとかしてくれるかもしれない。


根拠なんてないけど。


この時の俺は、花音を心から信頼してしまっていた。