✴︎ユメside
私は病室から外をみていた。
星の綺麗な夜だ。
私の病室のまどからは、あの日彼と歩いた田んぼ道が見える。
もう一週間経つのに、彼は現れない。
一瞬で現れて、一瞬で消えた。
幽霊のような神秘的な人だった。
明るくて笑顔が太陽みたいな人だった。
日野架乃という名前だった。
忘れられない彼の名前を、何度も胸の中で繰り返してしまうのだ。
壁に彼のコートを綺麗にかけた。
取りに来て欲しい。
少しだけ、また会いたい。
彼と出会った日は…。
余命宣告された日だったな。
あと3ヶ月。
ドナーが見つからなければね。
私はまだ何もしていない。
遊園地にだって行ってない。友達とショッピングにも行ってない。
彼氏だって出来たことない、キスとか一度くらい…。
そりゃあ。
してみたいよ。
…中学の友達も、もう誰も来ない。
みんな忙しいんだ。
高校に入ってみんな生き生きとキラキラとしているんだろうな…。
私はいつしか、
キラキラとしている友達を想像したら
生きることがいやになった。