行け…!カノ…。
僕は心の中で叫んだ。
カノが手首を見せるように、手を女に突き出した。
「何を…!!!」
女はびっくりしたようで少し後ずさりする。
「あ…。」
そしていきなり声が小さくなったかと思うと、女の動きが止まっていた。
そうだ…。それでいいんだ。
その瞬間女の手をカノがつかんだ。
そして僕がユウヒの後ろに回る。
カノが女の手首を回す。
「うっ!」
女が崩れ落ちた。
ナイフが床に落ちる。
その途端にユウヒも崩れ落ち、僕が受け止める。
ユウヒをドア近くの床に座らせた。
「ここでまってて。」
僕がいうとユウヒは頷いた。
しかし、彼女の目は死んでいるように下を向いている。
怖くて動けないみたいだ。
そして、僕は仲間さんの元へ行く。
仲間さんを抱き上げ、既に床に座らせたユウヒの元へ行った。
「アイ!!」
ユウヒは涙を浮かべて仲間さんによりそう。
「動くな!!!」
何だ?!!
女の叫んだ声がしたと思うと、女は自分の首にナイフをもって来ていた。
もう一本、ナイフを隠していたらしい。
「こっちに来るな!!」
女は慌てながら、くるな!くるな!と叫び続ける。
女は息が荒くなりながらナイフを自分に向けている。
…この人。
女の手は震えていた。
…怖いんだ。
…この人、本当は怖くて仕方ないんだ。
女の額には汗が滲み、手が震えている。
その様子が何かに怯えているようにしか見えなかった。
僕はユウヒと仲間さんの側にいた。
2人の前に座り、守る。
カノは黙ってその様子を見ていた。
カノの笑顔は完全に消えていた。
鋭い目。
僕は改めて彼の偉大さを知った。
「…太陽の世界の王族の風格だ…。」
僕の言葉にユウヒが反応した。
「…え?」