「あんなぁ〜デリカシーって知っとる?」

デリカシー…。

「相手の事を思いやる事?」

「ぶっぶぅー!優しくする事、やで!!」


あっとるわ!!


なっちゃん..思いやりって言葉知らんな...。

「で?そのデリカシーがどうしたん?」

話の続きを促す。

「そうそう、ほんでな、女の人はな、いつでも綺麗でおりたいねん!お婆ちゃんになるとしわがいっぱいやろ?せやからな、お肌つるんつるんって思われたいから、年齢は聞いたらあかんねん!分かった??」


…正直言って、良く分からない。

「まぁ、分かったわ。聞かんかったらええんやろ?年齢。」

僕はちょっと呆れ気味。
女ってよー、分からへんなぁ。


「うん!それでよーし!」

相変わらずニッコニコのなっちゃん。

このなっちゃんがお婆ちゃんになってシワシワになるところなんて、想像つかへんわ。

ただ一つ分かることは、なっちゃんはお婆ちゃんになっても常に笑っとるぞ...。


その後、お互いの家の前で、体重を聞いたらビンタされるで、とか、好きな人聞いたら蹴飛ばされるで、とか、色々聞かされた。

その日以来、なっちゃんは体重を言わんくなった。
誕生日になっても、何歳か言わんかった。
まぁ、普通に分かるけどな。僕と同い年やし。
好きな人がおるかどうかは、多分なっちゃんには関係ないジャンルや。と、僕は思っていた。

なっちゃんの言う好きな人は、多分夏巴母ちゃんか友達のみなかちゃん?やっけ?まぁ、そんなもんやろ。





なっちゃんは、一生笑顔や。




と、思っていた矢先、


もしかしたらなっちゃん、もう笑わんのとちゃうか、って心配になる出来事があった。

今でもあんときのなっちゃんの姿は忘れれやん。

なっちゃんが、初めて僕の前で大泣きしたんや。







「…ん、なっちゃん?」




漫画をひたすら読んでた夏巴は、

自分でも知らんうちに床で寝たんやろな。




スー…スー…



ほんま、なっちゃんは何も変わらへん。

寝顔なんか、ほんまに赤ちゃんみたいやで。

なぁ、なっちゃん。


もう、辛くないか?



もう、泣いてへんか?




僕があの日、なっちゃんをずっと守るって
言った事、忘れた?覚えとる?





ごめん、ごめんな、なっちゃん。





お願いやから、忘れててな。

忘れてくれな。








僕は夏巴の寝顔を横目に、再び瞼を閉じた。