そのまま一緒に帰っていると、ふと、美咲ちゃんが言い出した。


「あー、バイト、どうしよっかぁ。もうやめるって言っちゃったし。……結構居心地も良いところだったのになぁ……。」

「……俺も辞めようかな。」


 俺の言葉に、美咲ちゃんがこっちを振り返った。


「え、なんで?」

「……確かにいい人ばっかりだけど、美咲ちゃんがいるからっていうのが大きいかなって。」

「……」


 美咲ちゃんはきょとんとした顔で何度も瞬くと、少し照れくさそうに空を仰いだ。


「……わたしも、そうだった……。」


 そして俺がぷ、と吹き出すと、美咲ちゃんはポコポコと俺の背中を軽く叩いた。


「……ていうか、ずっと気になってたんだけど、バイトのみんななんで聖也のこと知らないの?」

「……あ、それは、……あそこの人達にはわたしが純平くんのこと好きだって、バレてたから……。」

「……じゃあ、気付いてないの俺だけだったんだ。」

「うん。て言っても、噂で広がっちゃっただけだけど……。」


 ふーん、と少し不機嫌になった素振りを見せると、美咲ちゃんは不安げに俺の顔を覗き込んだ。


「……なんか、不公平。」


 唇を尖らせながら言うと、美咲ちゃんはくす、と笑った。


「わたしだって、……ずっと気付かなかったし、同じだもん。」

「……確かに。」