野球にとって、大事なのは手。
以前に徹は私にそう言った。ハンドケアは大事に劣るなと酷く説教するまで。
だから、やめて。どうしてそんなことするの。
テーブルに力任せに叩き、プルプルと震える拳はどうも痛々しい。
「徹…手っ、」
「…言うこと聞けよっ、」
震えていた、徹の声。泣きそうになるのを必死に堪えた。今声を発してしまえば涙を流してしまいそう。
「お前は才能がある。正式な大会に出て、お前はもっと視野が広がる。」
つらつらと並べられる言葉は興味がない。
「だから絶対に俺についてくるな。お前は才能がある。無駄にすんな。」
いつの間にか離れた手は妙に冷たかった。
ハンドケアは気持ち良く、いい気分だったのに今はとても、モヤモヤと晴れたない。
「未来、」
悲しげな瞳が苦しそう。