間近にある瀬良君の顔に
屋上でキスされそうになった日のことを思い出し、急いで顔をそらした。

「あっのさ…!!
本に挟まってたんだけど、写真の女の子すごい可愛いね!誰?」


「…あー。隣の部屋に住んでた人。美緒、っていうんだ。」

「住んでたってことは…引っ越しちゃったの?」

ふと顔を上げて瀬良君の顔を見る。


「美緒はね、死んだよ。
丁度五年前の今日に。
このマンションの屋上から飛び降りて、ね。」


瀬良君はなんの感情も見えないような
冷たい顔をしていた。