「もちろん。金魚鉢パフェ、楽しみにしてるわね」

「ホントに食べる気満々? ふたりで食いきれるかな……」



 お互い軽口を叩いて笑い合う。

 やっぱり、春日の側が一番落ち着く。

 他の男じゃ、こうはいかない。



 しかし、当面の懸念は完全に消えたわけではなかった。

「……今の状況、やっぱ流されちゃまずいわよね」

「何の話?」

 春日のおかげでささくれた気持ちは解れたものの、問題は何ひとつ解決していない。


 東雲の召喚。
 宗真の願い。


 相反する事実を前に、柚月は何もできずにいる。


 一番、腹立たしいのは、ハッキリしない自分の気持ちだ。


 何が嫌なのか。
 自分がどうしたいのか。


【月鎮郷】での出来事が頭を巡るだけで、何も思い浮かばない。


 だから、何も決められない。


 そんな自分がますます嫌で。

 解決の糸口はないものかと再び考えを巡らせると、



《霊圧探知 対象【蒼龍】》



 突然、頭の中に声が響いた。



「んなッ!?」

「?」

 怪訝な表情の幼馴染みを、ごまかす余裕はなかった。