「人気メニューは『金魚鉢パフェ』。本当に金魚鉢を器にして、ホイップやアイスクリームをこれでもかって盛ってあるとか。友達数人で食べきるリーズナブルな有名スイーツ……」
「是非とも、お供させてください」
柚月は、一歩下がるなり腰を直角に曲げて頭を下げる。
要するに、隠れ蓑に自分を連れて行きたいらしい。
それくらいお安いご用だが、ひとつの疑問が生じる。
(春日って、甘いもの好きだったっけ?)
むしろ、苦手だったと思う。
幼い頃は遊びに行く先々でもてなされる菓子をどう処理するかが、彼に課せられた試練だった。
大抵は、その隣にいる柚月がおいしく頂戴することになってはいたが。
自分が甘いものに弱いのは、そんな経緯によるものかもしれない。
懐かしい記憶を辿っていると、成長して男前になった幼馴染みが覗き込んでくる。
「機嫌なおった?」
いたずらっ子のような笑顔で気づく。
店に誘ったのは、春日なりの気遣いだ。
柚月はお礼を言う代わりに、にっと笑ってみせる。