何のつもりかと幼馴染みを見上げれば、意地の悪い笑顔を浮かべていた。



「オレと付き合って」



 そう囁くように呟かれ、じっとこちらを見つめてくる。

 告げられた方の柚月は、覗き込んでくる瞳をまじまじと見つめ返して────





「いいわよ。どこに?」

 あっさりと安請け合いをしてから、ハッと気が付く。

「あ、土日は駄目よ。栞たちと買い物に行くから……でも、春日も無理かな。しょっ中、部活の助っ人とかしてるし」

 今週末の予定を口にすると、春日は肩を震わせて苦笑した。

「そこまでサラッと受け流すの、柚くらいのもんだよ」

「? 何のこと?」

 さっきまでの会話で、何か勘違いをしたのだろうか?

 柚月は素でわからなかったのだが、幼馴染みは言い直したりしなかった。すぐに「まぁ、いいや」と別の話題を切り出す。

「去年、駅前の通りに喫茶店ができただろ? そこのスイーツが評判なんだけど、女性客が多くてさ。男ひとりじゃ敷居が高いらしい」

「ふーん……他に行く人いないの? 彼女とか」

 何となく呟いたが、春日は曖昧に笑うだけだ。