目撃者なんかいないと高を括った報いか。
 件の副委員長がどこから入手した情報かは知らないので、迂闊に喋ればボロが出る可能性がある。

「どうなんですか? 嘘ですか、本当ですか?」

「いや、それは、えーと…………」

 突然しどろもどろになった柚月はどう切り抜けるか思案していると、ぐいぐいと長谷川が突っ込んでくる。

「身に覚えがないなら、きっぱりと否定できるでしょう。それとも、何かやましいことでもあるんですか?」

「あの、その……ねぇ?」

 光しか反射しない分厚い眼鏡が近づいてくる。
 どう切り抜けるかも考えられない窮地に立たされ、柚月が弱り果てていると。



「悪いね。それ、オレのせい」



 背後からの救いの声に、風紀委員の動きがピタリと止まる。
 長い間、油を差してロボットみたいに彼女はぎこちなく振り返った。

「昨日、遊んだら彼女が大負けしちゃってさ。いまだに悔しさを引きずってるんだ」

 声の主は男子生徒だった。


 それも、ひと目で美形とわかる整った顔立ちをしている。