一方的に線を引く東雲に怒りを覚える。
 むしゃくしゃが収まらずに、長谷川に八つ当たりをしているのだ。

 そこまでわかっているのに、柚月の気は収まらない。


「蒼衣さん。あなたの言う論理は、屁理屈だという自覚はあるのですか? めちゃくちゃな主義主張は、あなたの人間性を損ねるだけです。それに副委員長は、私に指示したわけではありません。あなたと同じクラスの私が連絡すれば手間が減ると思っただけです」

「それは悪かったわね。じゃ、副委員長様とやらは私に何のご用なの?」

 わざとらしく謝罪をして用件を訊き出す。
 その目的によって、今後の逃走計画を練るつもりだった。

 そこで、相対する長谷川の眼鏡がキラリと光る。


「副委員長は、あなたが昨日、他校生とケンカしていたという証言の確認をしたいとおっしゃっています。事実ですか?」


 うげ。
 面倒なとこを見られたな。

 服装違反くらいなら注意を受ければ、すぐに解放されるのだが。

 ことに暴力沙汰となれば、教師も黙ってはいないだろう。最悪、停学処分もありえる。