彼女は、右足を踏ん張るような前屈みの姿勢で固定されていた。
 しかも、腰まで地面に沈んでいる。

 彼女を支点に大きな円を描くように地盤沈下しているのだ。


 目の前の光景に、盗賊たちは震え上がる。

 彼女は、かかと落としの要領で地盤を破壊したのだ。



 まともに戦ったら、生命がいくつあっても足りない。

 恐るべき怪力を前にして、盗賊たちはそう直感した。



「あんたたち」

 ぽつりと呟く柚月の声に、男たち全員が肩を震わせた。




「『ちょっと後にして』って、言ったでしょ」




 射抜くような怒気を孕んだ鳶色の瞳。
 ただし、その視線は氷のように冷たい。

 彼らのとどめを刺すには十分だった。
 盗賊たちは、へなへなとひび割れた地面に座り込む。



 同時に崩れたあばら家からも、ぼろぼろと何人か転がり落ちてきた。
 もともと、頑丈ではない建物だった上に地盤が大きく歪み、倒壊というより上下真っ二つにずれてしまった。

 中にいた盗賊の仲間に、なす術はない。