改めて、東雲にも当たってみるが大した収穫はない。

「僕の前任者ってとこかな。とても優れた術者で、苑依姫と同じ【星詠み】の力を持ってた」

 とだけ言って、会話を打ち切ってしまう。

「そういうんじゃなくて……知り合いだとか、他の事件に関わってるとか、何か別の情報ないの?」

 こんなに早く終わると思わなかった柚月は、慌てて東雲の前に立ち塞がる。

 盗賊たちの誘拐事件とどう関わるかが気になったのに。

 ヤツの返事は素っ気ない。
 ちらりとも柚月を見ずに、脇を通り過ぎる。



「君には関係ない」



 ただ、それだけ告げて。



 この時、はっきり感じた。

 彼との距離。

 一歩先に、引かれた線。



 ひらりと白の花弁が落ちる。
 宗真が贈ってくれた花から、剥がれていく。




 柚月は唇を噛みしめる。


 漠然と感じ続けた苛立ちの理由。

 それが、ようやくわかった。


(……部外者は知らなくていいってことね)


 東雲が拒絶した。

 自分が、この世界の人間ではないから。