ちょうど、召喚前に接触してくる東雲の声と似ていた。


 腹話術とは違う。
 どう処理していいかわからない異様な光景に、柚月は戸惑うしかない。


 その時、苑依はわずかに視線を伏せた。
 そこでようやく目の前の人物が人形ではないことを知る。

《このような姿で迎えることをお許しください。私は術の精度を高めるため、身体機能の大部分を薬で眠らせています》

「薬……?」

《はい。四肢の自由や言葉を話す機能などを封じる代わりに、霊力と術の効力を底上げしています。今、あなたに語りかけているのも、私の思念をあなたの脳に直接伝えているからです》

 にわかには信じがたいが【月鎮郷】では当たり前のことなのか。

 その点が判別しない柚月は、とっさに別のことが気になった。
 頭に直接思念を送るなら、自分の考えを読まれたりしないだろうか。