その瞬間、たまりかねた盗賊たちが騒ぎ出す。
「いい加減にしろ、おまえたちッ!」
「騒ぐなって言ってんだろうがッ!」
「もう構うか! いっそ、殺っちま……」
興奮した男たちの恫喝にも、柚月は怯えどころか、驚きさえもしない。
そっと青年の胸ぐらを掴む手を離した。
緩慢な動きで振り向くと、スカートからのびる足を高々と持ち上げる。
まるで、わざとらしい野球の投球フォームのように。
盗賊たちが、白く細い足に見惚れること数秒。
流麗な動きで、彼女のかかとが地面を打ち鳴らす。
ドゴォッ!
ありえない轟音とともに地面が大きく砕ける。
地響きに似た激しい揺れに、盗賊たちは立っていられない。
誰もが手にしていた武器を離して、四つん這いになる。
ビキッ、ビキビキっ!
幾筋もの亀裂が入り、隆起と陥没が同時に発生する。
大量の地面の破片と砂塵が襲いかかり、盗賊たちの視界を塞いだ。
彼らは、何が起きたかわからなかった。
ようやく土埃が晴れ、周りの景色を見渡せる頃。
地面の上に立っていた柚月に、男たちは瞠目した。