歳は東雲より少し上だろうか。
整った顔立ちに優雅な立ち居振舞い。
教養のある上品な男性という印象を受ける。
彼は、広い敷地を持つ苑依姫の邸を案内してくれていた。
「知りませんでした。漣殿も、そんな冗談を口にするんですね」
柚月は、彼に少なからず好感を持った。
異世界の人間と知れば、大抵は嫌な顔をするというのに。
嫌悪感のようなものは伝わってこないし、とても気軽に話しかけてくる。
「実際に、噂の【蒼龍】様とお会いして納得しましたよ。漣殿が出し惜しみするお気持ちがよくわかります」
「よしてくださいよ、雪也殿。それじゃ、僕がこいつを使うのに渋ってるみたいじゃないですか」
「おや。違いますか」
彼の言葉に、東雲が押し黙った。
ヤツには珍しく苦手な人物であるようだ。
ますます、すごい。
初対面であるというのに、柚月の中で彼の評価はうなぎ登りに上昇している。
彼の名前は、保坂 雪也(ほさか ゆきなり)。
苑依姫の警護責任者で、彼女を盗賊の手から救い出した張本人である。
柚月は、苑依が羨ましくなった。