柚月は、がっくりと肩を落としたくなった。


 どんだけ、アホなおっさんだろう。
 これでは、柚月に暴れてくれと言っているようなものではないか。



 なら、望み通りにしてやるか。



 刀を抜いた従者は三人。

 とにかく先手必勝。
 彼らの流儀に付き合う義理はない。

 柚月は、拳を強く握り直した。

「は、離さんか、小娘!」

「だったら、まず……」

 胸元を掴まれた男は、柚月の手から脱出を試みる。
 もちろん、そんな抵抗でほどけるはずもなく、柚月が掴む腕を大きく振りかぶった。

「自分でお供のところへ帰んなさいッ!」

 叫ぶなり、男を放り投げる。

 彼は向こう側の白塀まで吹き飛び、従者たちの視線が釘づけになった。


 パキンッ!

 柚月の視界に、白刃の破片が舞う。

 主人の優雅な転び方を眺めている隙に、懐に入って刀の腹を掌底で叩き折ってやった。



(まず、ひとり)



 続けて、側にいた従者の手元に神経を集中する。

 彼の持つ刀は、頭上へ掲げられた。

 柚月は目の前で手を叩く。
 振り下ろされた刀は合わさった両の掌で止まり、見事な真剣白刃取りが決まった。