「この子供たちの誰かが……牛車から落ちた私を笑ったのだ!」


「あぁ……」

 説明されて、柚月は納得してしまった。



(牛車から転がり出ちゃったのね)



 激しい揺れや、何かの拍子に外へ出てしまうこともあるかもしれない。
 その現場を見かけたら笑ってしまうのも無理はないが、やはり子供を叱るのはいただけなかった。


「故意じゃないんだから、許してあげてよ。
 逆に、おじさんが転げ落ちた時、この子たちが無反応だったら余計に恥ずかしかったと思うわよ?」

 柚月が何の気なしに言う。

 本人としては、ギャグを滑らせたお笑い芸人のいたたまれなさを主張したつもりだったが。

 その場にいた人間たちは、思わぬ反応を示した。

 貴族は真っ赤になって震え、子供たちは噴き出す口元を必死に押さえている。

 やがて、腹を抱えて大爆笑。
 野次馬の大人たちまで苦笑していた。



 柚月は、何が起きたのかわからず目を瞬かせる。

 まぁ、場が和めばいいかとなりゆきに任せようとする。
 しかし、当然それを快く思わない人間がひとりいた。