「さっさと名乗り出んか! 知ってて黙っているなら、そいつも同罪だぞッ!」

 泥棒にでも遭ったのだろうか。


 貴族の男はひどく興奮しながら、周りにいる人間を詰っている。

 大抵が百姓の子供で、びくびくと肩を震わせていた。
 さらに、男の声で(柚月を含む)野次馬が集まっている。

「さては、おまえだな!? おまえでなくとも、その場にいたのだから同罪だッ!!」


 苛立ちを募らせた男は、近くにいた子供の胸元を掴んだ。


 どんな事情があるにせよ、こうなると完璧な八つ当たりだ。
 見かねた柚月は、近寄って男の手首を掴む。

 強く握って解放させ、自由になった少年を後ろへ隠す。

「何だ、貴様……!」

 案の定、睨まれるが柚月は気にしない。
 男の手を握ったまま、抗議する。

「そっちこそ、おとなげないんじゃない? この子たちが何したってのよ?」

 割って入った女子高生を不審に思いつつも、男の興奮は収まらなかった。
 怒りの視線を周囲の人間に投げかける。