「宗真。後は任せる」

「は、はい。行ってらっしゃいませ」

 深々と頭を下げる少年に見向きもせず、さっさと外へ出てしまう。
 お供の盗賊たち(彼らの口ぶりでは、もう足を洗ったのだろうが、柚月の中ではまだ盗人のままである)も、ぞろぞろとあとに続く。



 一体、どういうつもりなのか。
 少なくとも柚月は、東雲が宗真に対して皮肉を浴びせた現場を見たことがない。

 どんな失敗をしようとも責めたり、怒ったりしない。
 柚月が同じことをしたら、間違いなく毒を吐かれる事態でもだ。

 彼を大事にしているとも違う。
 宗真の存在は認識しているだろうが、人並みの関心を寄せているとも思えない。


 けれど、あの盗賊たちを自分の邸へ連れて来た。

 どんな目的があるにせよ、宗真の言葉と東雲の態度は一致していない。
 その齟齬をどう解釈するべきか、柚月は悩んだ。



 眉間に皺を寄せ、穴が開きそうなくらいに東雲の背中を見つめる。
 別に、そうしたってヤツの本心がわかるはずもないが。


 視線を感じたらしい東雲が、振り返ってこちらを見返してきた。