真顔でさらりと爆弾発言するも、柚月は真に受けたりしない。
 ヤツが本心を口にしないことは、わかりきっている。



「そんなことないよ。毎回、悪党を懲らしめる君の強さに惚れ惚れしてる……」

「ウソつけ! 呼び出す度に、『怪力娘』だの『破壊神』だの言ってたのは、どこのどいつッ!?」


 そこで、青年は初めて視線を逸らした。
 そっぽを向くなり、整った顔を盛大に歪めて舌打ちする。

 そのふてぶてしい態度に、柚月はぶるぶると怒りに震えた。

 即刻、ヤツの首を絞めてやりたい衝動にかられるが、かろうじてこらえる。



 落ち着け。
 落ち着くのよ、柚月。

 ここで怒ったら、いつもと同じパターンだ。

 これ以上、ヤツの好きにさせてなるものか。



 柚月は一度、大きな深呼吸をして握っていた拳に力を込めた。

 息もかかるほど近くに青年を引き寄せる。
 揺るがぬ漆黒の双眸を見つめ、柚月は穏やかな口調で語りかけた。