「それに、お供は表向きの理由ですから。新しい使用人が次から次へと増えちゃって。働いてもらわないと」

「新しい?」

「はい。できました」

 正面にあった鏡を手に取り、柚月に渡す。

 左側の耳付近に白い花弁が髪留めのように飾られている。
 宗真が、いつもの花を髪に結ってくれたのだ。

「とっても、お似合いですよ」

「……ありがと」

 こういうこともサラッとできてしまうから、侮れない。

 今時の女子高生なら髪に花を飾られても、恥ずかしいだけだ。

 それでも、宗真の素直な厚意が嬉しい。
 自分を誠心誠意もてなそうと気を遣ってくれている。
 他人をこき使うだけの東雲とは大違いだ。

 柚月が全力で拒絶できないのは、間違いなく彼の存在が大きい。


「じゃあ、そろそろ侍廊(さむらいろう)の方へ行きましょう。さすがにお師匠さまも、準備が整う頃でしょうし」

 にこにこと笑う宗真は、手を取って案内してくれた。

 不謹慎ながら、柚月は年下のエスコートに自然と口元が緩みそうになる。


 自分の住む世界にもこんな男の子がいたなら、さぞやモテるだろうに。