「ほ、本当なのか!? 女子高生が『ちょっと』って口にしたら、『彼氏の家にお泊まり』だってゼミの女の子たちが言ってた!!」
「それ、かなり偏った情報だと思うけど」
動揺するあまり問題発言をする兄に対して、柚月は至極まっとうな意見を示す。
普段、東雲のような血も涙ない鬼を相手にしているせいか。
いつの間にか、向こうが先に取り乱すと冷静に対処できるようになったらしい。
「そうなの?」
妹の言葉に涙を浮かべ、柾人が首を傾げてくる。
仕方ない。
正直に白状してやるか。
彼は、本気で心配しているだけだ。
痛む腹がある身としては、さっさと折れるべきだろう。
柚月は右手を上げ、宣誓するような仕草で答える。
「うん。それには胸を張って否定できる。天地神明にかけて」
「ああ、よかった!」
言い終わらないうちに、抱きついてくる。
いちいち暑苦しいが、柚月はされるがままになっていた。
何せ兄は自分に物心つく前から、この調子らしい。
他に兄もいないため、比較もできない。諦めて受け入れるしかなかった。