いきなり敵に背を向けた彼女はアスファルトの地面に手をつく。
勢いは殺さず、しなやかな両足を頭上へ持ち上げた。
彼の顔面はその軌道上にあるため、ショートブーツの踵が顎に命中する。
ガッという鈍い音とともに、血飛沫が鮮やかに舞った。
転んだ不良とは比較にならない、華麗な前方転回を決めた柚月。
倒れた不良たちの上に跨がるような形で仁王立ちした。
柚月の正面には、目を丸くさせた少年がいる。
こちとら異世界に呼ばれて、刀を持った盗賊の中に丸腰で放り込まれている身だ。
嫌でも度胸だけはつく。
なので、売られたケンカは盛大に買うことにしている。
ましてや、自ら売ったケンカは必ず勝つことにしている。
こんな連中を好き勝手にさせておくことなど、柚月の辞書にはない。