いつ見ても『ムカつく』といった感想以外、柚月は思いつかない。

 歳は、二十代前半だろうか。
 色白で、華奢な印象の青年だ。
 線が細く、整った顔立ちからは中性的な雰囲気を醸し出している。
 薄く開かれた漆黒の双眸は眠たげで、何を思っているか読み取れない。
 普通なら近寄りがたい表情だが、彼ならば憂いを感じさせる艶っぽさがあった。


 いっそ殴り倒したいくらいの眉目秀麗といった表現が相応しい男性である。

 胸元には、水晶の数珠が幾重にも巻きつけられていた。
 端目からすれば、神主に見えなくもない。



「漣」

 柚月は、彼に向かって右手を差し出した。

「なんか武器ちょうだい」

「いやだ」

 間髪入れずに吐かれた、すっぱりとした拒絶。


 ぴくりと柚月の眉が跳ねた。

「丸腰で行けっての? その腰の太刀は飾りか、コラ」

 チンピラのような挑発にも青年は動じない。
 冷めた表情で、視線すら動かさずに告げた。



「君みたいな狂犬に刃物なんか渡したくない」

 あくまで断固拒否する。
 柚月のこめかみにビシッと青筋が浮かんだ。