だが、東雲の態度はどこ吹く風だった。
「真面目に答えてるよ。
僕が望んだから君はここにいる。その距離はないに等しい。逆に僕が拒絶すれば、君は永遠にこの地を踏めない」
「そういうんじゃなくて、もっとこう……科学的な、実際の距離みたいなの!」
手を動かして説明するも、彼には通じていない。
東雲は歩みも話も止めなかった。
「元の世界と共通項が少ないことは、君の方がわかりきってるだろ?
ここは、無限にある平行世界のひとつ。君の世界の双子星。水面に浮かぶ空。鏡合わせの実像。失われた過去。あったはずの未来。君のいる世界に全てに通じ、全てとの相違をなす世界」
謎かけのような、意味不明な単語だらけ。
いつもなら、この辺りで会話が途切れてしまう。
だが、今日は引き下がりたくない。
なるべく穏便に、譲歩する形で訊き出してみる。
「抽象的すぎるのよ。もう少し、わかりやすい表現ないの?」
すると、東雲は袂から古びた巻物を手品のように取り出した。