「きっと前世は、極悪人だったのよ。好き勝手に生きてたせいで、来世まで皮肉った性格が抜けないんだわ」

「聞こえてるぞ。本音だだ漏れ娘」

 東雲は低い声音とともに、わずかに横目で視線を投げかけてくる。

 柚月は反射的に口を両手で覆った。
 いつの間にか、心の声が零れ落ちたようだ。

 眠たげな目つきの東雲は、溜め息をついて告げてくる。

「何度も言っているだろう。君は選ばれた人間なんだ。その優れた才能を僕らの世界に役立ててほしい────ってね」


「私の世界じゃね、それは貧乏くじ引いた人間に言うのよ」


「君の【力】は眠らせておくには余りにも惜しい。それこそ、世界規模の損失だ。特に、その怪力とか怪力とか怪力……」

「怪力、連呼すんな! てか、他にないのかよッ!?」

 沈黙する東雲が自分をからかっていることは明白だ。

 いちいち気にしていられない。
 柚月は、腕組みして息を長く吐いた。

 とりあえず、自分の疑問を解消することに努めてみた。