「ようこそ。次元の狭間を渡る【彷徨者(ほうこうしゃ)】よ」
背後からかけられた涼やかな声に、柚月は恨みがましく振り返る。
突き出した腰の奥に、優雅に笑う眉目秀麗の青年が鎮座する。
彼は、柚月を召喚した術者・東雲 漣だ。
「…………」
彼は微笑を消して、ある一点を凝視する。
不思議に思い、その視線を追った柚月は目を剥いた。
「ッ!?」
宙に浮いたままのプリーツスカートが捲り返っている。
彼の位置からでは、下着がまる見えだった。
東雲は裾を捌いて立ち上がるなり、不機嫌そうに吐き捨てる。
「さっさと直せ。見苦しい」
「あ、あんたがいきなり呼び出すからでしょ!」
慌てて向き直る柚月は、顔を真っ赤にして抗議する。
スカートの裾を掴み、立ち膝の姿勢というマヌケな格好のため、いまいち迫力に欠けていた。