「ッ!?」

 開けた視界に、板張りの床が現れた。
 柚月は、とっさに両腕を前へ突き出す。


 ドタッ!
 派手な音のあとに、掌や肘、膝のあちこちに激痛が走る。

「痛ッ……!」

 四つん這いの姿勢で、うめく。

 呼吸はできず、身体もすぐには動かせなかった。
 固い床に頬を押しつけ、痛みをやり過ごす。

 自然と腰が浮く姿勢になる。格好悪いことこの上ないが、構っている余裕はなかった。



 そこは、床板だけの広い部屋。
 几帳があり、すぐ側に調度品が置かれただけ。

 右手には、開けた和風庭園がある。



 柚月は、悟った。
 長谷川といた学校とは違う、別の場所────いや、異世界へ連れて来られたことを。