「漣! あんた、どういうつもりよ!? しばらく呼び出さないって言ったじゃん!」

《そのつもりだったんだが、実は苑依姫が…………もういい。今すぐ来い》

 説明の途中で面倒くさくなったらしい。
 悪びれもせず、要求だけを突きつけてくる。


 この上から目線な声と同じ、やはり自分勝手な男だ。



「ふざけんなーッ! 今、生活指導中だよッ!」

《四方一尺 因果剥離》

「待たんか、人格破綻者! この世知辛い現代社会でも、仕事の始めは『お願いします』って挨拶するぞ!」

「あ、蒼衣さん……?」

 柚月が腕を振り上げて暴れ、長谷川の戸惑った声を洩らした瞬間だった。



《空間転移 対象【蒼龍】》



「待てって言ってんでしょーッ!?」


 最後の抵抗も、抑揚のない声にかき消される。




《────発動》






 カッ!
 目映い光が、柚月のまぶたに灼きついた。

 直後、足元は浮遊感に襲われれる。
 つま先から落下していく感覚なのに、頭上から引っ張り上げられている気もする。

 ちょうど微睡む夢で、空中に投げ出されるような。
 落ちていく怖さと、ほんの少しの心地よさを感じる刹那。