《霊圧探知 対象【蒼龍】》
聞き慣れた低い声音が鼓膜を震わせる。
柚月は、ぎょっとして頭上を見る。
《対象捕捉 意識接続》
「れ、漣!?」
「は?」
周囲には、彼女たちふたりの他に人影はない。
振り返って瞬きする長谷川から手を振りほどく。
胸元の赤いリボンを緩め、ブラウスの中から何かを引っ張りあげた。
彼女の指に絡みついたのは黒革の紐。
その先に結ばれた蒼色の勾玉が精彩な光を放っている。
「ア、アクセサリーの所持は校則違反ですよ!」
「やかましい!」
あくまで自分の職務に忠実な風紀委員を怒鳴りつけ、再び天井を見上げる。
「漣! 漣でしょ!」
《聞こえるか》
傲然とした声が直接、頭に響いてくる。
天井から降ってくるわけでもないのに、見上げて文句を言うのは気分だった。