そこまでわかっていても、柚月は席を立てない。
 幼馴染みに逃げ帰ると悟らせない、もっともらしい理由を思いつかないし、目の前には楽しみにしていた金魚鉢パフェがあるのだ。

 針のむしろくらいで、諦めるのは惜しいデザートだった。
 彼女たちの視線は、なるべく意識しないようにする。

「こういうところって、彼女と来るもんじゃないの?」

「う~ん。そうだね。どうやら気付いてもらえなかったみたいだ」

 他人事のように呟く感想に、柚月はきょとんとした。

「どういうこと?」

「そのまんまの意味だよ。勇気を出して誘ってみたけど、彼女には通じてなかったってことさ」

 肩をすくめて話す内容は、反省のようにも思える。
 柚月は、春日の発言とこの店に連れて来られた理由と結びつけてみる。

「すると、これはその相談料ってこと?」

「そう思ってもいいよ」

 臆面もなく返す幼馴染みは、優しい微笑みを浮かべる。

 いつの間に、そんな表情を覚えたのか。
 小さな頃から幼馴染みとして付き合ってなかったら、柚月でさえドキドキするような爽やか笑みだった。