そのせいか、金魚鉢パフェの攻略がいまいち進まない。
決して、食べきれないというわけではないのだが。
「柚は、こういうところ嫌い?」
「そうじゃないけど……」
嫌いではないが、もごもごと口ごもってしまう。
はっきり言い切れないのは、周りの視線のせいだった。
英国風のおしゃれな店内は、ゆったりとした音楽が流れている。
ただしそれとは別に、刺し殺されそうな鋭い視線を柚月は身体中に感じていた。
(……早まったことしちゃったなー)
もう少し考えてから返事をすればよかった。
向かいに座る春日は、何せ有名人だ。
その証拠に同じ学校の女生徒は、どんな会話をしているのか聞き耳を立てているし、他校の女子高生も何度も春日を盗み見ている。
さらに店の外れを陣取る女子大生ふたりは、こちらの様子をつぶさに観察していた。
一緒にいる柚月には、「とっとと出てけや」という視線を投げかけてくる。
彼女たちは自分を追い払って、逆ナンをする気満々のようだ。