「その前、カツアゲの時は制服だったかも」

「柚……」

「でもでもでも!」

 幼馴染みの溜め息を慌てて遮った。

「もし身元がバレても私だけでしょ? 栞と莉子は平気よね?」

「希望的観測って言うんだよ。そういうのは」

 がっくりと肩を落とした幼馴染みだが、すぐに考えを切り替えた。
 柚月と長い付き合いのせいか、過去にこだわっている暇はないと悟ったのだろう。

「とにかく用心するに越したことない。柚も友達ふたりもなるべくひとりにならないことだね」

「……ですよねぇ」

 良案は浮かばない曖昧な返事に、幼馴染みはフッと笑うとカップに口をつけた。

 状況的には、アイドルのプライベートといったところか。
 ただコーヒーを飲んでいるだけなのに、相手が春日だと優雅なシーンに見えた。

 とても絵になるなぁと思いつつ、柚月は尋ねる。

「ねぇ、春日」

「ん? なに」

「そろそろ、ここに来た理由を教えてくれない?」

 頭を悩ませる案件はいくつもあるが、新たな懸念が浮上してきた。