格闘技、もしくはスポーツを一度は志しておきながら、暴走族のリーダーに成り下がるとは。
たゆまぬ努力と公平、公正を重んじるスポーツマンとしてあるまじき姿だ。
絶対に、その無駄に高い鼻っ柱を折ってやる。
柚月は唇をきつく引き結ぶと、改めて大神の攻略法を考えはじめた。
(リーチが長い分、間合いに入りづらいけど……やりようはあるはず)
幸いにも、大神は男子高生としては標準的な体格だった。おそらく春日と同じくらいだろう。
足の長い大柄の男なら話は別だが、これくらいの間合いなら攻め手は無限にある。
むろん、それらは敬愛する師匠直伝の技だ。
「なになに。今頃、怖じ気づいちゃったのか……なッ!?」
柚月が攻めてこないことを勘違いした大神は、再び蹴りを繰り出す。
一方の柚月は避けない。
わずかに一歩だけ退き、両手で靴底を受け止めた。
「ッ!?」
さすがに真正面から防ぐとは思わず、大神が驚きに目を見開く。
柚月は靴底を掴んだまま、流れるように背後へと捻る。つられて、大神が背中を見せた。