ケンカの鉄則。
 予想外のアクシデントに遭遇しても、ポーカーフェイスを貫け。

 罵詈雑言など威嚇は相手にするだけ無駄なので、右から左へ聞き流すべし。

 というか、知能の低い犬の言語を理解できない柚月は無視を決め込んだ。


 その甲斐あって、不穏な空気をかぎとった買い物客が周囲に集まってくる。

 よしよし。
 いい兆候だ。

 ギャラリーは多いほどいい。

「そういうわけだから、私も親友もあんたの知り合いになるつもりは全くないの。わかったんなら、そこをどいて」

「……言ってくれるね」

 大神が、笑いの種類を変えた。
 さっきまでは栞を含めた興味だったのだろう。

 珍しいものを眺めるような瞳が、すっと冷たくなる。

 柚月の言葉を不愉快に感じたのだ。
 彼の目には、微かに苛立ちを宿している。

「それじゃ、リーダーとしてこいつらのために落とし前つけないとね」

「落とし前より、私の親友に対する謝罪が先じゃない?」

 柚月は、ぴしゃりと叩き潰す。

 落とし前だの何だのと、不良たちのくだらない面子に付き合う義理はない。