彼らは、俗に言う暴走族だ。
 さすがの柚月も、そんな輩を相手にしたことはなかった。
 ただの不良とは違う思考回路をしているかもしれない。


 状況は、悪化したといっていい。


「悪いわね。私、あんたたちと仲良くする気ないの」

「おっと」

 長居は禁物とばかりに栞の手をとって逃げようとするも、押し戻された。

「またまた。そんなこと言わないで」

 そんなに何がおかしいのか。
 大神はニコニコと上機嫌で話を続ける。

「だって、キミのお友達が俺の彼女になっちゃえば、自然と長く付き合うことになるよ」

 屈託のない笑顔に、柚月は頭突きをかましたくなる衝動を必死でこらえた。
 ぴくぴくと眉が痙攣したのは気のせいではない。


 こいつは、不良のリーダーによくある典型的なタイプだ。

 世界の全てが、自分の思い通りになると信じきっている。


 柚月の嫌いなタイプだった。
 一番苦手なクモの次に。


 いつもなら、すぐに殴りかかってケンカを開始するところだが、今は背後に栞がいる。


 乱闘はギリギリまで避けるべきだ。