柚月は、冷静に現状を見る。
どう転んでも騒動が起きるだろう。
相手は六人。
一度に捌くには厳しい人数だ。
かといって、ぼやぼやしている暇もない。
このままでは、栞が彼らに連れていかれてしまう。
(迷ってる時間はないわね……)
瞳に、強い光が宿る。
柚月は、ぎゅっと両の拳を握った。
「莉子、さっきはキツイ言い方しちゃってゴメン」
ぼそりと呟くと、莉子がハッと顔をあげた。
「でも、今から言うことをよく聞いて。
誰でもいいから近くの店員さんを捕まえて、警備員さんを呼んでもらって。渋るようなら、警察に通報するって脅しなさい」
「柚は……どうする気?」
問われた柚月は、荷物の全てを莉子に押しつけた。
かがんでスニーカーの靴紐を結び直す。
「わかってるでしょ。問答してる暇はないってこと」
そう言って立ち上がった柚月は、親友の顔を真正面から覗き込む。
不安な顔を見せてはいけない。
彼女にもやってほしい仕事があるから。
「お願い、力を貸して。栞を無事に助けたいの」
涙目の莉子が、きゅっと唇を引き結んだ。