それは、今の状況だけが原因ではなくて。
もともと、自分には何かが欠けているように思う。
柚月は、溜め息をつく。
結局、自分はどこの世界でも中途半端な人間。
多少の矛盾を感じつつも、自分を貫く長谷川や日下部の方がマシなのかもしれない。
「柚ッ!」
大声で名前を呼ばれて、はっとする。
見れば、表情を強張らせた莉子が走ってきた。栞の姿はない。
嫌な予感がして、すぐに立ち上がる。
「なにかあったの?」
「栞が……栞が……ッ!」
その言葉だけで十分だった。
柚月は、急いで荷物を手にする。
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